地理的表示とは
その地域ならではの特徴ある産品の名称を地域の知的財産として保護
地域の伝統的産品の中には、地域と結びついた品質、製法、社会的評価、「ものがたり」(製法の伝来にまつわる伝承など)などを有する魅力あるものが多数存在します。それらには、生産地が産品のブランドとしての価値を発揮するものもあります(夕張メロンなどが有名です)。このような名称を「地理的表示(Geographical Indications: GI)」と言います。地理的表示は知的財産権の一種と位置づけられており、条約による国際的な保護の対象となっています。
名称を保護する知的財産権として商標権がありますが、地名を含む名称は地域の共有財産であるため、個人による独占使用を認める商標権による保護にはなじみにくいという問題があります。日本では、地域の生産者団体などの所定の団体に対し、一定条件下で商標登録を認める地域団体商標制度という特別な制度の下で商標権による保護が可能な場合があります。
ワインやチーズなどの伝統的産品を多く有するヨーロッパには、地域の伝統的産品について、生産地、生産方法、産地と結びついた特性およびその確認・管理方法を定め、名称と共にこれらの情報を登録するという、商標制度とは別個の独自の保護制度を定める国があります。フランスのAOC制度は、ワインがお好きな方ならご存じかと思いますが、EUにも地理的表示の保護に関する理事会規則が存在します。日本では、平成27年(2015年)に、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が制定され、地理的表示の登録保護制度が開始されました。熊本県には、「くまもと県産い草」、「くまもとあか牛」、「くまもと塩トマト」等多くの登録産品を擁しています(令和5年7月20日現在8件登録されており、北海道と並び全国トップです。)。
もう少し詳しく
地理的表示とは、地理的原産地に由来し、確立した品質や特性を有する商品(多くは農林水産品およびその加工品ですが、美術工芸品、工業製品なども含まれます)について、その原産地を特定する表示(名称以外に、図形等も含まれます。)です。有名どころでは、「夕張メロン」、「神戸牛/但馬牛」などがあります。多くの地理的表示は地名を含んでいますが、「いぶりがっこ」のように、地名は含まなくても生産地がある程度想起できるものも、地理的表示として保護される場合があります。
地理的表示は、法令や条約で知的財産権の1つとして保護されています。例えば、WTO(世界貿易機関)の加盟国は、WTO設立協定の附属書であるTRIPS協定により、地理的表示を知的財産権として保護することを義務付けられています。同協定は地理的表示の保護に関する最低限の基準(ミニマムスタンドー度)を定めており、国内法などでより高い水準の保護を図る国や地域も存在します。 最低限の基準として協定に定められている規定を大雑把にまとめると下記のとおりです。欧州諸国のワインの産地表示に対する強いこだわりを感じさせる規定ぶりです。
- ワイン、蒸留酒以外:産地について公衆を誤認させるような使用の禁止
- ワイン、蒸留酒:公衆の誤認の有無を問わず異なる生産地の産品についての使用の禁止
話変わって、名称の保護に関する知的財産制度として商標制度がありますが、地域の共有財産である地理的表示は、個人による独占を前提とする商標制度にはなじまない側面もあります。また、地理的原産地に由来する確立した品質・特性も併せて保護したいというニーズにも商標制度では対応しがたいという問題もあります。 そこで、構成員に使用させるための商標について生産者団体などの特定の団体に対し登録を認める団体商標制度(日本では団体商標に加え、地域団体商標という制度が設けられています)や、品質を証明する団体に対し登録を認め、定められた基準に適合する商品の生産者などに、品質などのお墨付きを与えた上で使用を認める証明商標制度(アメリカなど)といった特別な制度を設けた上で、商標制度の枠組みの中で地理的表示を保護するという方法を取る国や地域が存在します。
一方、ヨーロッパのワインに代表されるように、長い歴史を有し、その地域の地名を関するだけで価格が数倍にも跳ね上がるような伝統的産品を擁する国や地域も存在します。ボルドー、ブルゴーニュなどの高級ワインの生産者にとって、他産地のワインや低品質のワインにこれらの地名を冠することは許しがたい行為でした(今もそうですね)。そうなると、たとえば「ボルドー」を名乗ってよいワインの条件を定義する必要があります。生産地、原料、生産方法、品質の確認方法などなど、様々な条件がありますが、誰がどうやって決めるのかというのも問題になります。裁判による決定、行政による決定など紆余曲折を経て(お上の決定に反発した生産者による暴動なども起こったとか)、地域の生産者が合意の上、産地や生産方法、品質基準などを定め、名称と一緒にそれらの基準をまとめた書類を提出し、審査を経て登録という制度の形が出来上がりました。フランスワインのAOC制度がその最古の例の1つです。その後、イタリアなどでも同様の制度が創設され、チーズなどにも対象が拡大され、欧州連合でも農林水産品、それらの加工品である食品などについて同様の枠組みの地理的表示の登録保護制度(PDO、PGIなど)が創設されました。このような制度を商標とは違う独自の保護制度ということで、sui generis型の制度と呼ぶこともあります。
欧州からの移民を祖先に持つアメリカやオーストラリアなどのいわゆる新大陸国家は、祖先が移住前に住んでいた土地の地名を使っていることもあるため、自分たちの祖先の土地の地名が欧州で保護されることへの危機感や反発もあるようです。パルメザンチーズ(元祖はイタリアのパルミジャーノ・レッジャーノです)のように、アメリカの大手食品メーカーが大量生産を経て世界ブランドにしたと自負している製品もあるため、地理的表示の保護のあり方を巡る対立はなかなかに深いものがあります。
日本では、2015年に「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が制定され、sui generis型の登録保護制度がスタートしました。
地域の農林水産物のブランド化のサポート
弁理士としての経験も踏まえ、総合的にサポートします
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面倒な申請手続全般を支援します
地理的表示の登録申請は、生産者を構成員とする団体が行うことになりますが、申請対象産品の生産地、生産方法、生産地と結びついた特性(品質、評価)、生産方法及び特性を団体自身が管理する手順などについて構成員が合意の上で、それらを書類の形で取りまとめる必要があります。場合によっては、管理体制の構築や団体規約の改正などが必要となる場合もあります。中嶋行政書士事務所では、申請書類の作成のみならず、管理体制の構築、規約の制定や改正、申請産品の歴史に関する史料調査のお手伝いなどについてもサポートします。
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新品種の品種登録もお任せください
伝統的産品のブランド化以外に、各都道府県の農業関係の試験研究機関や生産者によって育成された新たな品種を核に、収穫物や加工品を含め総合的にブランド化を進めるケースもあります。福岡県の「あまおう」、佐賀県の「いちごさん」等がその典型例です。この場合、商標権などの他の権利も含めた知財ミックス戦略が有効な場合もあります。中嶋行政書士事務所では、弁理士としての経験も踏まえてこうした知財ミックス戦略についてもサポートが可能です。
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